WEBライターの椿れもん です。
当番組「れもんのE-lemon」メインコーナーの「真夜中のハローワーク」。
6月16日(火)の放送では、とてもユニークな肩書きを持って活動されている方をご紹介しました。初のTwitter取材で、Q&A形式のアンケートのように文章でインタビューをさせていただいた内容をたっぷりお届け。番組内でご紹介しきれなかった詳しい部分も、このレポートで補足していますので、ぜひぜひお読みくださいね。
※ 再放送は、6月21日(日)17時~です。
真夜中のハローワーク
vol.8 日常採集標本家 小西秀和 さん
今回ご紹介したのは、日常のなにげないものを見つけてスマホで撮影し、採集した日常を標本にしてSNSで公開したり、展示イベントを開催されたりしている、日常採集標本家・小西秀和さんです。小西さんとは、「キナリ杯」という作家の岸田奈美さんが主催されたおもしろい文章を投稿するコンテストをきっかけにご縁をいただきました。
音声での出演はNGということで、Twitter取材したアンケート回答を基に、ネーミングや活動のきっかけ、お気に入りの風景などについてたっぷりお伝えしました。
そもそも、「日常採集標本家」とは?
小西さんが、「日常採集標本家」と名乗るようになったのは、最近のことだそうです。
そもそものきっかけは、動物園のパンダの行列に並んでいるとき、近くにいた子どもがアリを見つけて、とても嬉しそうな声で「いた~」と叫んだ1コマだったそうです。小西さんは、「私は非日常のパンダじゃなくて、日常のアリをみつけてよろこんだり、おもしろがったりする大人になろう」と心に決め、仕事の肩書だけじゃつまらないと、ずっと思っていたこともあり、「日常採集標本家」と名乗ることにしたのだそうです。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
日常採集標本箱 (31/40)|小西秀和 #note #こんな社会だったらいいな #日常採集標本 https://t.co/4dKBya4Dt1
— 小西秀和/日常採集標本家 (@hdkzkony) November 16, 2019
https://note.com/hdkzkony/n/n13e669d83b31
毎日、なにかしらの「日常で見つけたもの」をスマホで写真で撮って、インスタグラムにアップされています。
https://instagram.com/hdkzkony/
そのハマりっぷりについては、こちらの記事に詳しく書かれています。
https://note.com/hdkzkony/n/n722509d80825
小西さんが学生時代を過ごされた静岡では、これまでにワークショップや展示を開催されたこともあり、記憶集と標本集を制作して、地元の図書館に寄贈されたのだとか。今でも、現地の図書館ではいつでも閲覧や貸出ができるようになっているそうです。
ちなみに、同じ肩書きの人は、おそらくいないと思うとのこと。インスタの世界でも、世界中にマニアックな人たちが数多くいますが、小西さんは「自分の生活の範囲内で、じぶんのなかで発見がある!」という心のうごきを大切にしているのだとおっしゃいます。
これまでの標本コレクションからのベスト3は?
「日常採集標本に上も下も右も左もなく、標本はすべて同列に扱うことに価値があると思っている」ので順位はつけられないとおっしゃる小西さんに、あえて3つ+オマケを選んでいただきました。
植樹枡(街路樹を植えている根本の部分のこと)
「北野白梅町から千本今出川までの道路の南側の植樹枡だけを標本にした写真集を2月頃につくり、アートブックフェアに出展しました。ちなみに、およそ1キロの道のりに、植樹枡は83枡あって、おなじようでどれも表情が違うという、かなりマニアックな仕上がりになったと思います」とのこと。
電柱の上の先っぽ
「電柱の先っぽをじっくり見たことありますか? 京都には古い電柱が残っているようで、先っぽが尖っていたり、むかし旗でもあげていたんじゃないかという感じで、丸くなっているものがあったりします。いつも通り過ぎていた電柱の上も、見上げてみたらおもしろいです」とのこと。
イケズ石
「道端に置いてある大きめの石をイケズ石と名付けて、インスタにアップされている方がいます。このイケズ石というネーミングを知るまでは、ただの石が道端に置いてあるなぁというくらいだったんですが、知ってからはイケズ石だ!と、見つけたら喜んでしまいます」とのこと。
オマケ
「叡山電車出町柳駅のすぐ近くにある河合橋の北側欄干にど根性松があるのは知ってますか? ほんの小さな隙間から松がおおきく育っています。それと同じで、道端のちょっとした隙間から草花が咲いているのを見つけると、思わずコレクションしてしまいます」とのこと。
好きな色風景・音風景・味風景は?
好きな色風景
「錆(サビ)の色が好きです。ひとつとして同じ錆び方がないというのと、色のグラデーションが美しいです。ちなみに、ガードレールの支柱を真上から見ると円になっているんですが、その錆び方が、見ようによっては満月に見えてきます」と小西さんはおっしゃいます。
路上満月シリーズ
https://www.instagram.com/p/B89Awy6H1L5/?igshid=1lnt5syzx2wv1
好きな音風景
夕食どきの路地散歩。
食器がガチャガチャ鳴る音や、テレビの音、話し声、そして晩ご飯の匂いが漂ってくる細い路地を歩くのが好きだという小西さん。
詳しくは、こちらの記事で。
https://note.com/hdkzkony/n/n1940bace6900
好きな味風景
スパイスからつくるスパイスカレーが大好きな小西さんは、家でもよくつくるそうですが、娘さんたちは「パパのカレーだけは食べたくない」と言われるのだとか。なんとも、せつないですね。
スパイスカレーが好きな小西さんと、パパのカレーがきらいな娘さんたちのお話はこちらの投稿で。https://www.facebook.com/photo.php?fbid=450307215501871&set=a.271122096753718&type=3&theater
就職氷河期を中心とした、ミドル世代のリスナーさんへのメッセージ
子どもの頃、特になりたいものが無かったと話される小西さん。
2つのエピソードを交えて、リスナーさんへのメッセージをいただきました。
神戸が実家で阪神淡路大震災に被災したこともあり、高校時代は復興支援のボランティアにけっこうハマりこんでいました。日本中からボランティアの人が駆けつけてくれていました。
そこで知ったのですが、ボランティアさんに聞いてはならない言葉がありました。
「お仕事なにしてるんですか?」
高校生のときはピンときませんでしたが、大人になってよく意味がわかりました。
仕事があったら、こんなに長期間ボランティアに来れない、ということを。
でも、わたしはボランティアに来てくれていた大人たちに、いろんなことを教わりました。良いことも悪いことも。阪神淡路大震災から25年たって、もうすっかり大人になりましたが、じぶんが高校時代に出会った大人のようになれてるかな? と、思う時があります。
それから、もうひとつエピソードがあります。
わたしは村上春樹のファンです。
数年前に、村上春樹が読者の質問に答えるという企画がありました。
いまは、その企画が「村上さんのところ」という書籍にまとめられています。
その企画で、「生きる意味ってあるんでしょうか?」という読者の質問にたいして、「生きる意味なんてありません」と村上春樹はハッキリ答えられていました。
記憶があやふやですが、生きる意味がこれですと示されても、これの意味はあれで、あれの意味はそれで‥‥と、意味の意味を追いかけても意味がないと書かれていたような気がしています。
もしかしたら間違って覚えているかもしれせんが。
そして、村上春樹は「意味より関係性」に目を向けようと締めくくってました。
生きる意味はない。意味より関係性。
この言葉は、わたしのなかでずっと残っています。
日常採集標本家は、わたしがじぶんらしく生きていくために編み出したあそびです。
日常採集標本は、やっている意味はなくて、じぶんと世界との関係をおもしろがっているということかもしれません。
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小西さんが「日常採集標本家」と名乗るようになったきっかけのエピソード、特にお気に入りの標本、好きな風景とその理由、どれも本当に興味深いですね。そして、「日常を集めて標本にするということ自体に意味はなく、じぶんと世界との関係をおもしろがっているということかもしれません」と語られる小西さんの感性や世界観から、働き方・生き方のヒントをたくさんいただいた気がします。
※小西さんの活動をもっと知りたい、写真を見たい等々ご興味を持たれた方は、ぜひ下記よりチェックしてみてください。
■小西秀和さん Instagram
https://www.instagram.com/hdkzkony/
■小西秀和さん note
*「日常採集標本箱」にかんするワークショップ・展示等の企画やお問い合わせは、
hdkzkony@gmail.com へご連絡を!